arabiki blog

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行動経済学に見る「大雪りばぁねっと問題」について

行動経済学での''合理的犯罪モデル''と''つじつま合わせ理論''に見る大雪りばぁねっとの問題

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 先日朝の情報番組を見ていると、大雪りばぁねっとなるNPOの団体の代表が8億もの金額を瞬く間に使い切り、3億円の使途不明金があるにも関わらずインタヴューに「なにが悪いの」といって答えていたのを見て気分が悪くなった。

これらの問題は良くありそうな話かもしれないが、行動経済学で説明がつく。

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SMORC(Simple Model of Rational Crime):合理的犯罪モデル

シカゴ大学のノーベル経済学賞受賞者のゲーリー・ベッカーによる「シンプルな合理的犯罪モデル(SMORCモデル)」という行動経済学モデルでは想定される費用(罰金だったり刑務所に入る時間など)とズルをした時に自分が得られる便益を天秤に掛けて判断する際は、善悪の判断は入らずに単に起こりうる好ましい結果と好ましくない結果を比較し、ズルをするかどうかを判断すると言う物です。

これを費用便益計算と言います。

 

要約すると以下です。

これは3つの要素から成り立っています。

①ズルや犯罪から得られる「便益」

②ばれてつかまる「可能性または確率」

③つかまった時に自分に課せられる「処罰の大きさ」

で①>②+③の場合にずるや犯罪を犯すというものです。

現時点では大雪りばぁねっとは詐欺や横領などを犯していないかもしれませんが、今まで出てきている事が事実であるとするならば倫理にかけているのは間違いないですね。

SMORCから見ると便益が勝っている状態になっているということが言えます。

つじつまあわせ係数仮説

また「ずる嘘とごまかしの経済学」 (ダン・アリエリー著)によると、つじつまあわせ係数仮説というものがあり、これは現金との距離が離れれば離れる程不正が起きやすくなるというものです。

生の現金(お札や硬貨)を目の前にせずに例えばオンライン上の金額という数字だけでお金のやり取りをすると、人は自分の行動を正当化しようとしやすくなる。

大きなところでは、リーマンショックの引き金となったCDS(クレジットデフォルトスワップ)の組成などもその最たる物で、お札やコインではなくコンピューター上の数字をいじくるだけのためこちらも不正がおきやすくなった例です。

 身近にも会社のボールペンの備品は100円ぐらいでしょうが、これは持っていても罪悪感はさほど感じません。しかし、会社の金庫に入っている100円硬貨は盗まないのと同じです。

 

今回の事については今まで手にした事も無い金額が「大雪りばぁねっと」に渡り、SMORCの天秤がくずれてしまい、自分が受け取る実の便益がどんどん増えてしまった。

業者への発注などは現金で支払うことは無く、銀行の口座から振込をしていると仮説するならば、本来豪華なトイレや高性能なPCは必要無かったのですが、「つじつま合わせ係数仮説」によるところの現金から距離を置いてしまっていることによって自分がやっている事がだんだん麻痺してきて自信を正当化してしまったのであろうと考えられます。

 

ずる―嘘とごまかしの行動経済学

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  • 作者: ダンアリエリー,Dan Ariely,櫻井祐子
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